へき地医療とは
「へき地医療」とはなんでしょうか?一般の方はあまり聞きなれない言葉かもしれません。
ここでは小さいお子さんにもわかるようにできるだけ簡単にご説明します。
01へき地医療とは
日本国内には、多くの「過疎地」と呼ばれる地域があります。過疎地域とは「人口の著しい減少に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域」とされ、2018年度は全市町村のうち約半数の817市町村が過疎地域を持ち、国土面積の約60%を占める広大な地域に全人口の8.6%である約1000万人が居住しています。また過疎地域では全国に先駆けて高齢化が進んでおり、65歳以上の人口割合が36.6%と全国平均を約10%上回っています。
(総務省過疎対策室 平成29年度過疎対策の現状と課題 平成29年7月18日 https://www.soumu.go.jp/main_content/000513096.pdf)
過疎地域において地域医療体制の確保は重要なテーマで、特に無医地区の解消に力が注がれてきました。無医地区とは「医療機関のない地域で、当該地域の中心的な場所を起点として概ね半径4kmの区域内に人口50人以上が居住している地域であって、かつ、容易に医療機関を利用することができない地区」と定義されています。2014年で全国に637地区、そこに約12万人が住んでいます。過疎地域自体は1978年に1750地区あり、50万人が住んでいたこと比べると減少しています。
(厚生労働省 令和元年度無医地区等及び無歯科医地区等調査 令和2年5月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/10802000/000633109.pdf)
過疎地区に対する医療体制の整備は、厚生労働省のへき地保健医療計画に基づき進められてきました。計画は1956年から11次にわたって策定され、これに基づき各道府県が診療所の設置や病院による支援等の対策に取り組んでいます。2018年度からへき地保健医療計画は都道府県の医療計画に統合され、へき地の医療は各都道府県が取り組む5疾病5事業等の一つとして救急医療、災害医療などとともに一体的に取り組まれることになりました。
ここでいう「へき地」とは、「交通条件及び自然的、経済的、社会的条件に恵まれない山間地、離島その他の地域のうち医療の確保が困難であって無医地区及び無医地区に準じる地区の要件に該当する地域」とされ、2014年時点でへき地が存在しない千葉県、東京都、神奈川県、大阪府を除く43道府県の無医地区637か所と準無医地区420か所の合計1057か所が対象となっています。
(厚生労働省 へき地医療の現状と課題 https://www.soumu.go.jp/main_content/000513101.pdf)
02へき地医療のシステム
へき地保健医療計画における過疎地区の医療提供は、無医地区等に配置されるへき地診療所、へき地診療所を支援するへき地医療拠点病院、都道府県に設置されへき地医療のまとめ役となるへき地医療支援機構という3段階で行われています。
へき地医療支援機構
2011年の第9次へき地保健医療計画で都道府県に設置されることになりました。へき地医療支援事業の企画・調整を担う仕組みであり、へき地での診療経験を有する医師が担当官となっています。へき地診療所に対する代診医の派遣調整、ドクタープールの運営、へき地勤務医師のキャリア形成支援等を行います。
へき地医療拠点病院
都道府県知事が指定し、無医地区等への巡回診療、へき地診療所への代診医派遣、へき地医療従事者に対する研修、遠隔診療支援等の診療支援事業を行いながら、へき地地域からの入院患者の受け入れ等を行う病院です。過疎地域の中核病院であることが多く、救急医療、専門医療を担いつつへき地の支援も行うといった幅広い役割が求められますが、医師や診療科の偏在の余波を受け、へき地医療拠点病院においても医師不足が問題となっています。
へき地診療所
無医地区および無医地区に準ずる地区に設置される診療所で、2014年時点で1,111か所、運営主体は地方自治体、日赤、済生会、医療法人、学校法人等です。多くは医師一人、看護師数人、事務員数人で運営されており、過酷な勤務体制、生活の不自由さ、最新の医療を勉強できない等多くの問題を抱え、医師不足が長年の課題となっています。
03へき地医療に参加するには
このように、へき地医療はへき地医診療所を中心として、それを支えるへき地医療拠点病院、ドクタープール等を支えるへき地医療支援機構と、様々な人、組織、システムによって成り立っています。へき地医療に参加する、というのはこれらのどこに参加することでもよいのです。へき地診療所の医師や看護師として地域を支える、病院で高度な医療やケアを提供する、ドクタープールで医師の病気・けがや産休を支援するなど、様々な形でへき地医療に参加することができます。まずは興味を持っていただくことが重要です。へき地ネットをご覧になったことをきっかけにして、へき地医療に興味を持ち続けていただければ幸いです。
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